民事訴訟の場面において証拠となる文書はどのように提出しますか | 弁護士法人リコネス法律事務所

リコネスコラム

民事訴訟の場面において証拠となる文書はどのように提出しますか

1 はじめに

 今回は、民事訴訟法上の文書の証拠調べに関する制度について紹介させていただきます。

2 文書の証拠調べと文書送付の嘱託について

⑴ 文書の証拠調べの方法について

 民事訴訟は、原告が主張している権利又は法律関係の存否について判断をする手続です。そして、原告の主張する権利関係があるか否かを判断するために、原告・被告の両当事者は、さまざまな事実を主張します。

 自白の成立した事実については証明をする必要はありません(民事訴訟法179条)。しかし、争いのある事実については、権利関係を発生させる根拠となる具体的事実を主張するだけでは足りず、そのような事実があったことを証拠により証明する必要があります。

 裁判官の事実認定に客観性をもたせるために、当事者間に争いのある事実については、証拠に基づく事実認定が必要とされています。そして、当事者間に争いのある事実について、証拠により取調べを行うときには、当事者が申し出た証拠によらなければならないという考え方が弁論主義の第3テーゼの考え方です。

 このような弁論主義の第3テーゼの考え方によるならば、自分の主張している事実が実際にあったことを裁判官に対して説得するために、当事者は証拠を自ら収集して提出する必要があります。

 このことは、裁判所に証拠となる文書を提出する場合も同様です。

⑵ 書証について

 文書の証拠調べのことを書証と呼びます。すなわち、書証とは、文書に記載されている内容を裁判所が読んで、証拠資料とするための証拠調べのことです。

・文書の定義

 ここにいう文書とは、作成者の思想や認識を文字や記号などによって表現した有形物のことです。図面、写真、録音テープ、ビデオテープなどは、このような文書の定義には該当しません。そこで、民事訴訟法は、231条に、文書に準ずる物件についての取調べの方法に関する規定を用意しています。そして、同条によると、文書に関する証拠調べの規定が準用されることとなっています。

⑶ 書証の申出

 民事訴訟法219条に、書証の申出の方法が定められています。

 同条によると、書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならないとされています。

 その証拠を用いてある事実を証明をしようとしている者、すなわち、挙証者自身が文書を所持している場合には、その文書を提出して書証の申出をすることができます。

・文書送付の嘱託の申立て

 一方で、挙証者が文書を所持していない場合にはどのような手続をとればよいのでしょうか。

 挙証者が所持していない文書については、文書の証拠調べを求める方法は2つあります。1つ目は文書送付の嘱託の申立てです。

 文書送付の嘱託の申立ては、文書の所持者が嘱託に対して応じる義務があるときや、所持者が文書の提出に協力してくれる見込みがあるときには、利用すべきでしょう。

 しかし、協力してくれない場合には、文書送付の嘱託の申立てをしたとしても、強制力がないことから、文書を入手できません。

3 文書提出命令について

 以上のように、挙証者が文書を所持していない場合で、かつ、文書送付の嘱託の申立てをしたとしても所持者から文書の提出が見込まれない場合に利用されている制度が文書提出命令の制度です。

⑴ 文書提出命令違反の効果

 この制度において、文書提示義務がある者は文書を提出しないとサンクションを科されることになります。

 具体的には、文書を所持している者が誰かによりかわります。

 文書提出命令を当事者に対して行った場合に、その当事者が文書を提出しなかった場合には、原則として、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができます(民事訴訟法224条)。

 文書提出命令を当事者以外の第三者に対して行ったにもかかわらず、第三者が従わない場合には、裁判所は、決定で、20万円以下の過料に処することになります(民事訴訟法225条)。

⑵ 文書提出命令の申立ての方法

 文書提出命令の申立ては、文書の表示、文書の趣旨、文書の所持者、証明すべき事実、文書の提出義務の原因を明らかにする必要があります。

 文書の特定は、文書の表示と趣旨によってなされます。そして、文書の表示とは、当該文書の標題、作成日時、作成者などを意味しています。文書の趣旨は、文書の記載内容です。

 文書の記載内容については、文書の所持者が当該文書を他の文書と区別して明確に認識できる程度の概括的な特定をしていれば十分であるとされています(このような考え方を示したものとして、例えば、高松高決昭和50年7月17日行裁集26巻7・8号893頁があげられます。)

 なぜならば、文書提出命令を申し立てた者は、文書の表示や趣旨を正確に把握しているとは限らないからです。

 また、これらの事項を明らかにすることが著しく困難であるときは、文書の特定のための手続を利用することができます(民事訴訟法222条)。

4 まとめ

 以上のような文書提出命令の制度を用いれば、文書を所持していない場合であっても第三者に対して文書を提出するように求めることができます。ただし、文書提出命令が発令されるためには、証拠調べの必要性(民事訴訟法181条)と文書提出義務(同法220条)が認められる必要があります。

 民事訴訟において、文書がないから証明ができないとお考えの方も、上記の制度を利用すれば相手方当事者や第三者に対して文書の提出を求めることができます。具体的な事件における書証の申立てに関しては、弁護士までお問い合わせください。

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