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今回は、名誉毀損行為をした場合に、民法上どのような責任を負うことになるのかについて説明をさせていただきます。
名誉毀損行為をすると、民法上は不法行為責任を負うことになります。そして、損害賠償義務を負うことになります。
民法709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定めています。
この条文の文言から、不法行為の成立要件は、①故意または過失による加害行為が行われたこと、②権利または法律上保護される利益が侵害されたこと、③損害が生じたこと、④①と②の間に因果関係があることの4つです。
これら4つの事実については、被害者が証明責任を負います。
証明責任とは、ある事実が存在するかどうかを裁判所が確定できないときには、自己に有利な効果が認められないという不利益のことを意味しています。
もしも、①から④に当たる事実について証明に失敗した場合、被害者は自己の請求が認められないという不利益を受けることになります。
名誉とは、「人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価のこと」です(最判昭和45年12月18日民集24巻13号2151頁)。平たい言葉を用いるならば、名誉とは、人が社会から受ける評価です。
そして、ある事実が摘示されることにより、人の社会的評価が低下するようなことがあった場合には、名誉が侵害されたことになります。このような名誉の侵害のことを名誉毀損と呼びます。
この名誉も権利または法律上保護された利益にあたります。したがって、事実を摘示する行為が故意または過失により行われ、その結果、名誉権が侵害された場合には、それにより生じた損害を賠償する不法行為責任が生じることになります。
名誉毀損に当たるか否かは、一般読者の普通の注意と読み方を基準として判断されます(最判昭和31年7月20日民集10巻8号1059頁)。その基準に従って解釈した意味内容に従って、その記事が名誉を毀損するものと認められる場合には、不法行為責任を負うことになります。
次に、以上のような名誉毀損行為がなされた場合であっても、一定の要件を充たしたら免責されるとする判例法理があることから、そのご紹介をさせていただきます。
名誉毀損行為は、名誉権と表現の自由との調和を図る必要があります。
ある事実を伝達することが表現の自由の保障にとって重要な意味をもつことがあるからです。例えば、報道機関が事実の報道を行うことは報道の自由として表現の自由の一内容として認められています。報道機関が報道を行ったことが名誉毀損に当たる場合に、損害賠償をしなければならないとなると表現の自由が不当に制約されてしまうおそれもあります。
そこで、認められてきたのが、真実性の抗弁です。
真実性の抗弁は、事実の摘示による名誉毀損が行われた場合に、不法行為責任を負わないとするものです(最判昭和41年6月23日民集20巻5号1118頁)。刑法上、名誉毀損罪が成立しなくなる刑法230条の2と比較するとほとんど同じ内容になります。
同判例は、以下のように述べました。
「民事上の不法行為たる名誉毀損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である」。
この判旨から、
①公共の利害に関する事実に係ること(事実の公共性)
②もっぱら公益を図る目的に出たこと(公益目的性)
③摘示された事実が重要な部分において真実であることが証明されたこと(真実性)
また、③の要件については、仮に真実性が証明できなかった場合であっても、
「その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるとき」
と認められる場合には、不法行為責任を負わないことになります。
このような抗弁のことを相当性の抗弁と呼びます。
名誉毀損による不法行為責任が認められた場合には、上述のように損害賠償責任を負います。
また、一度低下した人の社会的評価を金銭だけで回復することは困難です。そこで、他人の名誉を毀き損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができます(民法723条)。
以上のように、名誉毀損行為を行った場合には、不法行為責任を負うことになります。これに対して、真実性の抗弁や相当性の抗弁が認められた場合には、不法行為責任を負わないで済むことになります。
具体的な事案において、不法行為責任を負うか否かは、いかなる対応をすべきかは、弁護士までお問い合わせください。