よい ゴール0120-410-506
今回は、民事訴訟における裁判上の自白について紹介させていただきます。
自白とは、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実の陳述のことです。
この自白には、裁判上の自白と裁判外の自白の2種類があります。
それぞれ、訴訟法上の効果が異なってくることから、まずはその違いについて説明していきます。
裁判外の自白が成立したとしても、以下で説明するような裁判上の自白が成立した場合に認められる訴訟法上の効果はありません。そして、裁判外の自白をしたという事実が自白をした者が主張している主要事実がなかったことを推認させる間接事実としてしん酌されるにすぎません。
以上で説明してきた裁判外の自白と異なり、裁判上の自白には、以下の3つの効果が認められています。
①審判排除効
②不要証効(民事訴訟法179条)
③不可撤回効
それでは、それぞれの効果について詳細に説明していきます。
「裁判所は、当事者間に争いのない事実について、判決の基礎としなければならない」というのが弁論主義の第2テーゼの考え方です。この弁論主義の第2テーゼの考え方から、裁判上の自白が成立した事実について裁判所は拘束され、それに反する事実を判決の基礎とすることはできなくなります。このような効力のことを審判排除効と呼びます。
民事訴訟法179条は、裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しないとしています。
このような効果のことを不要証効と呼びます。
裁判上の自白が成立した場合、そのような事実の主張を撤回することが制限されます。このような効果を撤回制限効や不可撤回効と呼びます。
裁判上の自白が成立した場合に生じる3つの効果の関係については、次のように説明することができます。
まず、事実の主張と証拠の提出を当事者の責任かつ権能とする建前である弁論主義の考え方から、弁論主義の第2テーゼが導き出されます。そして、この弁論主義の第2テーゼの考え方が審判排除効にあたります。
自白が成立した事実について裁判所が証拠調べをすることは、弁論主義に反して許されません。その結果、自白が成立した事実について当事者は証明をする必要がなくなります。そこで、生じるのが不要証効です。
不要証効の考え方によると、自白が成立した事実について証拠を用いた証明をする必要がなくなります。これを受けた当事者は、その事実を証明するために用いる証拠を収集することをしなくなったり、証拠を廃棄してしまったりするかもしれません。しかし、自白が成立した後にそれが撤回された場合には、自白が成立していた事実について再び証明をする必要が生じることになります。
以上を踏まえると、自白の撤回が行われると、証明を行う必要がないという信頼をした相手方当事者が不利益を被ることになります。そこで、このような不利益から相手方を守るために自白の撤回を制限しています。
それでは、以上のような裁判上の自白が成立するための要件はどのような要件かを確認していきましょう。
裁判上の自白の定義は、次の通りです。
裁判上の自白とは、「口頭弁論または弁論準備手続期日における相手方の主張と一致する自己に不利益な事実の陳述」のことです。
これを分解すると次のようになります。
①口頭弁論または弁論準備手続期日における主張であること
②相手方の主張と一致していること
③自己に不利益であること
④事実の陳述であること
それでは、各要件について解説していきます。
裁判上の自白と裁判外の自白を区別するために、①の要件が要求されています。
弁論の準備については、(ア)準備的口頭弁論、(イ)弁論準備手続、(ウ)書面による準備手続の3つの方法があります。
このうち、(ウ)書面による準備手続においては、当事者は出頭せず、陳述の擬制も行われないことから、事実の陳述がありません。また、(ア)準備的口頭弁論は、口頭弁論を準備の場として活用するものだから、口頭弁論に含まれるものといえます。
そこで、事実の陳述が行われる場面として、①の要件、すなわち、口頭弁論または弁論準備手続期日における陳述が要求されることになります。
相手方の主張と一致していれば、自白が先行している場合であっても、裁判上の自白が成立すると考えられています(先行自白)。
ただし、相手方がその主張を援用しない場合には、相手方の援用しない自己に不利益な事実の陳述として、裁判上の自白が成立せず、不利益陳述として別の取扱いを受けることになります。
不利益要件は、自白がどちらに成立したかを判断するために要求される要件です。そして、敗訴につながる可能性のある行為をした場合だと考える(敗訴可能性説)と、裁判上の自白が成立するか否かについて明確な基準だとは言えません。そこで、相手方が証明責任を負っている事実について裁判上の自白が成立すると考えます(証明責任説)。この考え方は、相手方が証明責任を負っている事実について証明責任を免れさせる点が不利益だと考えているものといえます。
自白の成立場面における事実は、主要事実に限定されるというのが通説的な見解です。そして、事実である以上は、権利や過失のような法的評価の概念が自白の対象に含まれていないことに注意する必要があります。
今回は、民事訴訟における裁判上の自白の効果と成立要件について紹介させていただきました。具体的な事案において、どのような事実を自白すべきかについては、弁護士までお問い合わせください。