
よい ゴール0120-410-506
今回は、使用者責任が成立した場合の効果、特に求償関係に着目をして解説していきます。
民法715条本文は、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うとしています。
このように、ある事業のために他人を使用する者が負う被用者が加えた損害を賠償しなければならないという責任のことを使用者責任といいます。
このように、使用者責任によって、使用者は被用者に代わって損害を賠償する義務を負うことになります。このような責任のことを代位責任と呼びます。
それでは、なぜ、使用者は被用者に代わって損害を賠償しなければならないのでしょうか。この点について解説していきます。
使用者責任の根拠は、主に2つあげられています。報償責任の原理と危険責任の原理の2つがこれにあたります。
まず、報償責任の原理の考え方から紹介していきます。
使用者は、被用者の活動によって利益を上げる関係にあります。このようにある活動をすることによって利益を得ている者は、これによって生じる損害についても責任を負うべきであるという考え方のことを報償責任の原理と呼びます。
次に、危険責任の原理の考え方について紹介します。
使用者は、被用者を使用することによって、自己の事業範囲を拡張することができます。このように事業範囲を拡張すると、第三者に損害を生じさせる危険も増大させることになります。このように、使用者が被用者を使用することで危険を増大させているのだから、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うべきだとする考え方を危険責任の原理と呼びます。
それでは、以上のような根拠を踏まえて、使用者責任に基づいて損害賠償請求するための要件について検討していきます。
使用者責任が認められるための要件は、①ある事業のために他人を使用すること、②被用者に不法行為責任が生じること、③被用者の不法行為がその事業の執行についてされたこと(事業執行性)の3つです。
具体的な成立要件の解説については、使用者責任についてをご覧ください。
以上を前提にして、使用者責任が成立した場合の効果について解説していきます。
被害者と使用者・被用者との関係、そして、使用者と被用者の間の関係の2つに分解することができます。そこで、これら2つを項目別で紹介していきます。
まずは、被害者と使用者・被用者との関係について紹介していきます。
使用者責任が成立するための要件には、被用者に不法行為責任が生じることが含まれています。そうすると、被害者は被用者に対しても損害賠償請求をすることができます。
以上のように、被害者は、使用者に対しても、被用者に対しても損害賠償請求をすることができます。
以上の2つの損害賠償責任について、使用者と被用者は連帯責任を負うことになるとするのが判例の考え方です。
ただし、二重に賠償金を得られるわけではありません。例えば、使用者から満額の賠償を受け取った場合には、被用者に対して更なる賠償を求めることはできません。
次に、使用者と被用者の関係について紹介していきます。
被害者に対して損害賠償を支払った使用者は、被用者に対して、その支払った額を使用者に支払うように請求することができます。このような請求権のことを求償権と呼びます。
民法715条3項は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げないとしています。
このように、使用者は、被用者に対して、自分の支払った賠償金の支払いを求めることができます。
このような請求が認められる理由は、使用者責任が代位責任だと考えられているからです。本来責任を負うべきなのは、被用者であり、使用者は代わりに支払をしています。したがって、使用者は代わりに支払った分を被用者に支払うよう求めることは当然できます。
ただし、事業者は被用者を使用することにより利益を得ていることから、事業から生じた損害のすべてを被用者が賠償しなければならないとするのは公平ではありません。そこで、使用者から被用者に対してする求償権は行使額が制限されることになっています。
判例も、「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである」としています(最判昭和51年7月8日民集30巻7号689頁)。
以上のように使用者責任が成立すると使用者と被用者は連帯して損害賠償責任を負うことになります。そして、使用者は、被用者に対して求償権の行使をすることができます。ただし、その額は、信義則上は相当と認められる限度に制限されます。
具体的な事案で使用者責任による請求が認められるかは弁護士までお問い合わせください。