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今回は、和解契約について紹介させていただきます。
和解契約は、民法が用意した典型契約の中でも重要な契約です。そこで、和解契約について紹介させていただきます。
民法695条によると、和解契約は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生じる契約です。
この条文を踏まえると、和解契約を締結するためには、次の3つの要素が認められる必要があります。
まず、①当事者間に争いが存在する必要があります。
次に、②当事者が互いに譲歩する必要があります。
最後に、③当事者が争いをやめる必要があります。
和解契約は、書面で締結しなくても効力を生じます。このように、当事者が口頭で締結すれば効力が生じる契約類型を諾成契約と呼びます。
ただし、後ほど述べるように、書面で行うことによって、一定の効果を得られる場合があります。
①や③の要件にある「争い」とは、両当事者間にある権利または法律関係の存否・範囲等に対する対立のことを意味しています。
②の要件を見ればわかるとおり、当事者が互いに譲歩をしなければ和解契約は成立しません。このように互いに譲歩することを「互譲」と呼びます。
契約当事者の一方だけが譲歩する場合には、互いに譲歩しているとはいえないから、この②互譲の要件を充たさないことになります。
互譲をする和解契約の類型とこのように当事者の一方だけが譲歩する契約の類型のことを併せて「示談」と呼ぶこともあります。
和解契約を締結する際に、書面を用いると一定のメリットがあります。まず、書面が作られることによって、後の紛争を防ぐことができることになります。「言った、言わない」の争いが生じることを防ぐためには、書面を作成しておくことが重要だといえます。
また、後に訴訟が提起された場合にも、契約書は重要な証拠として価値があるといえるでしょう。
裁判を行って権利があることを確定させたとしても、それを実現するためには、改めて国家に権利の実現を求める必要があります。このような手続を強制執行と呼びます。
強制執行を開始するためには、債務名義と呼ばれる権利の存在を証明する一定の書類が必要になります。そして、この一定の書類は、判決書である必要はありません。すなわち、強制執行を開始するためには、確定判決が必須というわけではありません。
「金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの」を執行証書と呼びます(民事執行法22条5号)。そして、この執行証書も債務名義になります。
強制執行を受諾する旨の文言を含めた和解契約書を公正証書で作成すれば、強制執行をすぐに行うことができるものになります。そうすると、訴えを提起して裁判所で長い期間戦わなくても、権利を実現できることになります。
民法696条によると、当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとされています。
和解契約の対象とされた事項には、真実と異なっていることが後でわかったとしても、和解によりなされた法律関係に確定するという効果があります。
このような効果を「和解の確定力」と呼びます。
和解の確定力が認められた結果、和解の対象となった事項について錯誤があったとしても、和解を取消すことはできません。
ただし、和解の確定力の効力は、争いの目的である権利に限られます。そこで、対象となった事項の前提に錯誤があった場合には、錯誤取消しが認められることになるとしているのが判例です(最判昭和43年3月15日民集22巻3号587頁)。
訴えを提起したあとに、裁判所が訴訟の当事者と相談して形成していく訴訟上の和解も、和解契約の一形態です(民事訴訟法89条)。民法上の和解契約は、上述のように、執行証書の要件を充たすような方法で締結されなければ、債務名義にはなりません。しかし、訴訟上の和解がなされた場合には、調書に記載されれば確定判決と同一の効力があることから、債務名義になります(民事執行法22条7号)。
以上でみてきたように、和解契約には紛争を終わらせる効力があります。そして、和解契約を締結すれば、より早く権利関係を確定させ、権利を実現することができる可能性が高いです。
具体的な事案において、和解契約を締結すべきか否かについては、弁護士までお問い合わせください。