
よい ゴール0120-410-506
この記事では、弁護士が、刑事事件において勾留された場合に、どのような法律上の対応を取ることができるかについての解説を行います。
起訴をされる前の段階のことを被疑者勾留、起訴をされた後の段階のことを被告人勾留と呼びます。
法律上、被疑者勾留の段階と被告人勾留の段階とでは、取りうる選択肢も変わってきます。例えば、被疑者勾留の段階では、保釈請求をすることはできませんが、被告人勾留の段階ではこれをすることができます。
そこで、この記事では、これらの段階を分けて解説を加えていきます。
まず、被疑者勾留がなされる前に、必ず逮捕がなされます。このことを逮捕前置主義といいます。
逮捕がなされた段階で弁護士が受任した場合には、まず、勾留決定がなされるのを防ぐための活動を行います。例えば、電話、面談、意見書の提出などを通じて、勾留決定をするか否かの判断を行う裁判官に対し、勾留請求を却下すべき旨の交渉を行います。
一方で、逮捕に対しては、後述するような勾留の場合と異なり、準抗告をすることができないというのが判例の立場です(最決昭和57年8月27日刑集47巻7号3頁)。したがって、準抗告のような法的手段をとることはできません。
勾留決定がなされた後は、さまざまな選択肢があります。勾留決定に対する準抗告、勾留延長に対する準抗告、勾留理由開示請求、勾留取消請求、勾留の執行停止などがこれにあたります。
なお、上述のように、被疑者勾留の段階では、保釈請求をすることはできません(刑事訴訟法207条ただし書を参照。)
以下では、勾留決定に対する準抗告、勾留延長に対する準抗告、勾留理由開示請求、勾留取消請求、勾留の執行停止についてそれぞれ解説していきます。
裁判官が勾留決定をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした勾留決定に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした勾留決定に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消し又は変更を請求することができます(刑事訴訟法429条1項2号)。
このような請求のことを勾留決定に対する準抗告といいます。
被疑者が勾留された場合、勾留の請求がされた日から10日間は身体拘束が続きます。そして、この10日間を過ぎた場合であっても、検察官は、裁判官に対し、期間を延長することを請求できます。裁判官は、やむを得ない事由があると認められるときは、勾留延長の決定をします(刑事訴訟法208条2項)。
このような勾留延長がなされた場合は、勾留延長に対する準抗告を行うことができます。
その詳細は、⑴で述べた勾留決定に対する準抗告と同じです。
勾留されている被告人や弁護人等は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができます(刑事訴訟法208条1項の準用する同法82条、以下、起訴前勾留部分の条文の引用において「刑事訴訟法208条1項の準用する」という部分を省略します。)。
勾留の理由の開示がなされると、裁判官及び裁判所書記が列席した公開の法廷で、裁判長が勾留の理由を告げることになります(刑事訴訟法83条、84条)。
これにより勾留の理由を知ることができ、他の法的手段につなげることができるようになります。
勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、裁判所は、検察官、勾留されている被疑者若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならないとされています(刑事訴訟法87条1項)。
そこで、弁護士は、勾留の理由または必要がないことを理由に勾留の取消しを請求することが考えられます。
裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被疑者を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被疑者の住居を制限して、勾留の執行を停止することができます(刑事訴訟法95条1項)。
そこで、弁護士は、勾留の執行停止をするように裁判所に働き掛けます。
原則として、起訴後勾留の対応は、被疑者勾留の段階と変わりません。しかし、大きな違いとしては、保釈請求をすることができるという点です。
保釈とは、勾留中の被告人に対し、保証金を納付させ、必要に応じてさらに裁判所又は裁判官が適当と認める条件を付し、一定の取消事由が生じた場合は、その保釈が取り消され、納付した保証金が没取されることがあるという心理的な負担を課すことによって、被告人の逃亡及び罪証隠滅の防止という勾留の目的を全うしつつ、被告人の身柄の拘束を解く制度です。
したがって、弁護士としては、起訴後には、保釈請求をすることが考えられます。
以上でみてきたように、弁護士は、刑事事件において勾留された場合に、被疑者段階では、勾留に対する準抗告などの手段を採ることはできます。しかし、保釈請求をすることはできません。
起訴後の勾留の段階では、被疑者段階では行えなかった保釈の請求という法的手段を採ることができるようになります。
上記の中からどのような手段を選択するかは具体的な事件により異なります。
具体的な刑事事件での対応でお困りの方は弁護士までお尋ねください。