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今回は、委任契約とはどのような契約であるかについて紹介させていただきます。
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委任契約とは、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる契約のことです(民法643条)。
民法643条にいう、法律行為をすることを相手方に委託する者を「委任者」と呼びます。相手方に当たる者が、「受任者」です。
委任契約は、民法643条の文言をみるとわかる通り、委任者と受任者の申し込みの意思表示と承諾の意思表示の合致だけで契約が成立します。したがって、委任契約は、諾成契約に当たります。
今回ご紹介しているのは、委任契約です。
ところで、民法656条には、準委任契約についての規定が1条だけ用意されています。同条によると、委任契約に対する民法上の規律は、法律行為でない事務の委託について準用するとされています。
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委任契約と準委任契約の違いは、委任者が受任者に頼む事務が法律行為を伴うものであるか否かです。例えば、委任者が受任者に売買契約を締結することを委任する場合には、法律行為を委託していることになることから、委任契約にあたります。
一方で、単に委任者が受任者に売買契約の代金を支払うように求める場合には、法律行為ではない事務の委託をしていることになることから、準委任契約にあたります。例えば、医師との間で締結する診療契約も準委任契約に当たると考えられています。
以上のように、委任契約に当たるか準委任契約に当たるかは、法律行為の委託がなされているか否かにより判断することになります。ただし、どちらの契約に当たる場合も、適用される法律はほとんど同じであることから、区別を厳密にする意義はあまりありません。
次に、法律行為の委託と代理権の発生との間にはどのような関係があるのかについて紹介させていただきます。
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法律行為の委託をすれば必ず代理権が発生するというわけではありません。したがって、委任契約の中には、代理権の付与を伴う委任契約と、代理権の付与を伴わない委任契約に分けられます。
民法644条の2第2項も、そのことを示唆しています。同条は、代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負うとしています。
そうすると、代理権の付与を伴わない委任という類型も民法が想定しているといえるでしょう。
代理権の付与を伴わない委任のことを講学上、「授権」と呼びます。授権という概念については認めたとも評価できる判例が出ています(最判平成23年10月18日民集65巻7号2899頁)。
Aの所有するブナシメジをBがCに対して販売する場合について、代理と授権の場合にどのように異なるかを説明します。
BがAから代理権を付与された場合、AとCとの間で売買契約が締結されることになります。そして、ブナシメジの所有権もAからCに移転することになります。
一方で、授権の場合には、BとCとの間で売買契約が締結され、ブナシメジの所有権はAからCに直接移転することになります。
このように、代理権を付与された場合と授権がなされた場合とで、売買契約の締結の主体に違いがあります。
委任契約は、法律行為の委託を受けた受任者が事務を処理するという役務を提供する契約です。同じく役務を提供する典型契約である雇用契約や請負契約とはどのような点で異なるのでしょうか。
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雇用契約は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる契約です。この雇用契約では、労働者は使用者の指揮命令を受ける関係にあることになります。
一方で、委任契約は、委任者が受任者を指揮命令する関係にはありません。むしろ、委任者よりも受任者の方がその道のプロフェッショナルである可能性が高い契約類型であるといえるでしょう。例えば、不動産を購入した者が不動産登記について司法書士に委任するという場合には、委任者である不動産の購入者が受任者である司法書士を指揮命令することはないといえるでしょう。
請負契約は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる契約です。したがって、仕事の完成がないと債務不履行の状態になります。
一方で、委任契約は、仕事の完成が必須ではありません。
ただし、請負契約と委任契約は、請負人および受任者にある程度の裁量がある点で雇用契約とは異なる共通点があるといえるでしょう。
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今回は、委任契約について紹介させていただきました。特に、契約書を作成する際に、どのような契約類型に近づけるかによって、民法上の保護を受けられるかどうかが変わってきます。具体的な契約書の作成等でお困りの方は弁護士までお問い合わせください。
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