よい ゴール0120-410-506
今回のコラムでは、供託とはどのような制度・仕組みであるか、どのような法律効果があるかについて、解説をしていきます。
このコラムを読むことで、供託の仕組みを理解することができます。また、どのようなときに供託をすることができるのか、それによりどのような効果が得られるかを理解することができます。
※契約の法的成立要件については、関連記事「保証契約について」も参照してください。

供託とは、お金などを供託所に提出して、その管理を委ね、最終的には供託所がそのお金などをある人に取得させることによって、一定の法律目的を達成することを目的としている制度です。
例えば、3で紹介する弁済供託は、債務者が返済する予定であるお金を供託所に預けて、その管理を委ねて、最終的には、供託所がそのお金を債権者に取得させることによって、返済債務が消滅するという法律効果を得ることができる供託の一種です。
法律で、供託することが義務付けられているとき、または、供託をすることができるとされている場合にのみ、供託をすることができます。
供託には、大きく分けて5つの種類があります。①弁済供託、②担保(保証)供託、③執行供託、④保管供託、⑤没取供託がこれにあたります。
今回のコラムでは、このうち、弁済供託を中心に解説をしていきます。

弁済供託とは、弁済のためにする供託のことです。
そこで、まずは、弁済とはどのようなものであるかを紹介します。
債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅します(民法473条)。要するに、弁済とは、借金の返済、代金の支払いのような債務の履行を行う行為のことです。
ここでは、売買の代金100万円を支払う債務を持つAさんを例にあげて説明します。Aさんは、100万円を債権者であるBさんに支払うことで、売買代金を支払う債務を全うしたことになります。
これを裏返しに言えば、Bさんは、Aさんに対して、100万円を支払えという権利は、AさんがBさんに100万円を支払った時点で消滅するということです。
それでは、本題である弁済供託の話に移りましょう。
弁済を行う債務者、すなわち弁済者は、一定の場合に、債権者のために弁済の目的物を供託することができます(民法494条柱書前段)。そして、弁済者が供託をした時に、その債権は消滅します(民法494条柱書後段)。
これが弁済供託です。
債権が消滅すると、債権者は、債務者に対して、債務を履行するように請求することはできなくなります。
先程のAさんは、Bさんのために100万円を供託したときは、AさんのBさんに対する100万円の支払債務は、その時点で消滅します。
そして、供託がされると、Bさんは、Aさんに対しては、100万円を支払うよう請求できなくなります。
それでは、Bさんは、どのように100万円の支払を求めればよいのでしょうか。このことについても民法は規定を設けています。
弁済の目的物が供託された場合には、債権者は、供託物の還付を請求することができます(民法498条1項)。
例えば、Aさんが100万円を供託したときは、Bさんは、供託物の還付請求を行うことによって、100万円を得ることができます。
なお、債務者が債権者の給付に対して弁済をすべき場合には、債権者は、その給付をしなければ、供託物を受け取ることができません(民法498条2項)。
※民事訴訟の場面でどのように証拠文書を提出するかについては、「民事訴訟の場面において証拠となる文書はどのように提出しますか」もあわせてご覧ください。
※相手方の保有する文書の開示を裁判所に求める手段としては、「文書提出命令が発令される要件について」も参考になります。
債権者が供託を受諾せず、または供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができます(民法496条1項前段)。
例えば、Aさんは、Bさんが供託を受諾するまでの間は、100万円を取り戻すことができます。
この場合においては、供託をしなかったものとみなされます(民法496条1項後段)。すなわち、供託をしていなかった状態になることから、債務の消滅していない状態に戻ります。そうすると、債権者は、債務者に対して、履行の請求を求めることができるようになります。
例えば、Aさんが100万円を取戻した場合には、Aさんの100万円の売買代金支払債務は消滅していなかったことになります。そして、Bさんは、Aさんに対して、Aさんが100万円を取り戻した後は、再び100万円の支払請求をすることができるようになります。

弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだときは、債務者は弁済の供託をすることができます(民法494条1項1号)。
例えば、Aさんが、Bさんに対し、100万円を支払おうとしたのに、Bさんが100万円の受取りを拒んだという場面において、Aさんは弁済供託をすることができます。
債権者が弁済を受領することができないときも弁済供託をすることができます(民法494条1項2号)。
例えば、AさんがBさんに100万円を支払おうとしたにもかかわらず、Bさんがどこにいるかわからず100万円を受け取ることができないというような場面がこれにあたります。
弁済者が債権者を確知することができない場合も、弁済供託を行うことができます。このときは、確知できないことについて弁済者に過失があるときは、弁済供託を行うことはできません(民法494条2項)。
これは、相続人と称する人の相続権の有無がわからず、相続人が誰であるかわからない場合等があたります。

以上でみてきたように、供託とは、ある目的のために、お金などを供託所に預け、最終的に、供託所が誰かに取得させるという制度です。
弁済供託の場面では、債権の消滅という効果を得るために、お金などを供託所に預け、そして、還付請求をすることで債権者はお金を取得できます。
※訴訟の途中で紛争を解決する方法としては、「和解とはどのような契約ですか」もあわせてご覧ください。
※訴訟提起に伴う費用負担については、「相手方に弁護士費用を請求できるか」も参考になります。
具体的な事案において、供託をすることができるかなどについては、弁護士までお尋ねください。
