集合動産譲渡担保の法律構成とは?|分析論と集合物論の対立を判例から解説 | 弁護士法人リコネス法律事務所

リコネスコラム

集合動産譲渡担保の法律構成とは?|分析論と集合物論の対立を判例から解説

1 はじめに

― 集合動産譲渡担保の「法律構成」が問題となる理由

 今回は、集合動産譲渡担保の法律構成についての考え方の対立についてご紹介させていただきます。

2 集合動産譲渡担保とは何か

― 在庫・流動資産を担保にする仕組みと実務上の意義

 例えば、倉庫にある在庫商品をまとめて担保に提供してお金を借りることができるととても便利です。そこで、判例法理上、動産をまとめて担保に提供するということが認められてきました。このような考え方を集合動産譲渡担保といいます。

 この集合動産譲渡担保の法律構成については主に2つの立場が対立しています。そこで、今回は、この2つの考え方の対立についてご紹介させていただきます。

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3 分析論の立場

― 個々の動産ごとに譲渡担保を捉える理論構成

 分析論とは、集合動産譲渡担保を個別の動産が集合体に加入しているときに、譲渡担保の目的物となると考える立場です。

 より難しい言葉を使うと、動産が集合体に加入することを停止条件として譲渡担保の目的物となる、そして、搬出され集合体から分離することを解除条件として譲渡担保の目的物でなくなるのが集合動産譲渡担保契約であると考える立場です。

 この立場によると、個々の動産が保管場所に搬入されるごとに譲渡担保の設定と対抗要件の具備という法律行為を行わなければならないとする立場です。

 しかし、この立場に従うと、譲渡担保権者は、倉庫に担保の目的となる動産が運び込まれるたびに、占有改定の意思表示をして対抗要件を具備する行為を行わなければならないことになります。

 このような負担を譲渡担保権者に課すことは妥当ではないと考えられることから、現在ではこの説は採用されていません。

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4 集合物論の立場

― 内容が変動する「集合物」を目的物とする考え方

 集合物論の立場は、内容が変動する「集合物」を観念するという立場です。

 そして、この集合物に対して譲渡担保権を設定するのが集合動産譲渡担保であると考えることになります。

 集合物(集合動産)に対して譲渡担保の設定行為を行えば、個々の動産に対して譲渡担保の設定と対抗要件の具備という法律行為を行う必要はないという考え方ともいえるでしょう。

 この考え方にいう集合物とは、保管場所に所在する数個の動産を集合的に把握した概念です。

 そして、集合物論の中でも対立がある。「おだやかな集合物論」と「集合物論徹底説」の2つです。

おだやかな集合物論|個々の動産にも担保効が及ぶとする立場

 おだやかな集合物論の立場では、集合物に対する譲渡担保権の設定行為により、個々の動産に対しても譲渡担保権が設定されることになります。このことは、個々の動産に対する個別の譲渡担保権の設定行為が不要であることを意味しています。

 また、対抗要件については、集合物について備えていれば、個々の動産についても対抗力を備えたことになります。したがって、個々の動産について、個別に対抗要件を備える必要はありません。

集合物論徹底説|目的物を一個の集合物に限定する理論

 このようなおだやかな集合物論と比較されるのが集合物論徹底説の立場です。

 集合物論の立場を徹底すると、流動集合動産譲渡担保における目的物は保管場所に観念される1個の集合物となります。このように、集合動産譲渡担保の目的物を個々の動産ではなく1個の集合物であると捉える立場が集合物論徹底説です。

 この立場では、譲渡担保権者は集合物に対して譲渡担保権を設定しているだけです。個々の動産に即して説明すると、集合物に対する譲渡担保権の設定があったとしても、個々の動産には集合物に設定された譲渡担保権の効力は及ばないことになります。

 そして、譲渡担保権の実行の通知によりはじめて集合物を構成する個々の動産に対しても譲渡担保権の効力が及びます。

 集合物論徹底説の立場によると、個々の動産についての保管場所への搬入及び搬出は、集合物の態様の変化であると捉えることができます。新たに動産が搬入されたとしても、集合物を構成する動産が変化するだけであり、目的物である集合物には変わりがないことになります。そして、個々の動産の処分については、集合物の利用に位置付けることになります。

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5 判例の立場

― 最判昭和62年11月10日はどの理論を採用したのか

 判例(最判昭和62年11月10日民集41巻8号1559頁)はおだやかな集合物論を採用していると考えられます。

 この判例では、「一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができる」と判示していることから、分析論ではなく、集合物論の立場を採用したものといえます。

 そして、「債務者が右集合物の構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、債権者は、当該集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、この対抗要件具備の効力は、その後構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となった動産を包含する集合物について及ぶものと解すべきである」という判示から、集合物論徹底説の立場とは整合しないことは明らかです。

 したがって、おだやかな集合物論を採用することを示したものといえるでしょう。

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6 まとめ

― 集合動産譲渡担保の法律構成と実務上の留意点

 以上のように、集合動産譲渡担保の法律構成については、さまざまな説の対立があります。

 個別の事案において、集合動産譲渡担保契約を締結する際に、いかなる契約をすべきか等については、弁護士までお問い合わせください。

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