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今回は、賃貸借契約の目的物を譲渡担保権者が無断で使用収益している場合に、無断転貸として契約を解除することができるのかを示した最高裁の判例(最判平成9年7月17日民集51巻6号2882頁)を紹介させていただきます。
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まず、XがAに甲土地を賃貸しました。甲土地の引渡しを受けた、Aは同土地上に乙建物を建てました。そして、AはBに対して乙建物を担保として譲渡した。BはYに対して建物を賃貸しています。

本件では、賃貸借契約の目的物である土地上にある建物が賃貸されています。このような賃貸があった場合には、
賃貸借契約の目的物となっている土地上にある建物の売買をした場合、通常は、土地の賃借権が従たる権利として移転します。
その一方で、建物の賃貸借は無断譲渡にあたりません。なぜならば、例えば、建物を貸していたとしても、建物の賃貸人は建物の使用収益は自由にできるから、土地の賃貸人と土地の賃借人=建物の賃貸人との関係は続いているといえるからです。今回の事案にあてはめると、AがBに乙建物を賃貸していたとしても、XがAから甲土地を借りているという関係には変わりがないです。
また、土地の賃借人がその土地上にある建物に抵当権を設定した場合も土地の賃借権の無断譲渡・転貸には当たらないとされています。抵当権が設定されただけでは、土地の賃貸人と土地の賃借人=建物の賃貸人との関係に変更はないからです。
例えば、本件において、Aが甲土地上にある乙建物に抵当権を設定した場合も、AとXとの間の賃貸借関係には何らの変更もありません。
ただし、抵当権の実行がなされ、建物が競売され、買受人があらわれると、賃借権の譲渡に当たります。なぜならば、建物が買受人に売却されると、それに伴って、土地の賃借権も従たる権利として移転するからです。
それでは、以上の⑴と⑵を前提に、土地の賃借人がその土地上にある建物に譲渡担保権を設定した場合はどのような法律関係になるのかを検討していきましょう。
譲渡担保権の法的性質をどのように捉えるかによりかわってきます。譲渡担保権が所有権移転の形式をとっていることを重視すると、譲渡担保権の設定に伴い建物所有権が移転し、それに伴い土地の賃借権も従たる権利として移転することになります。
しかし、判例は、譲渡担保権が設定されているにすぎないときには、建物の所有権は移転されておらず、賃借権の移転の効力も生じていないから、原則として、譲渡担保権が設定しただけでは、賃借権の無断譲渡にはならないという判断を示しています。
言い換えると、借地上にある建物にについて譲渡担保権が設定されたとしても、譲渡担保権設定者が引き続き建物を使用収益しているときは、民法612条にいう賃借権の譲渡がされたものとはいえないとしています。
その理由は、債権担保の趣旨で所有権が移転されたものにすぎず、譲渡担保権が実行されるまで受戻権を行使して建物所有権を回復することができるからです。また、賃借物たる敷地の現実の使用方法に代わりはないが、占有状態に変更はないから、当事者間の信頼関係が破壊されたということはできないこともあげられています。

本判例は、譲渡担保権が設定しただけでは、賃借権の無断譲渡にはならないという原則の例外を示しました。
建物を譲渡担保権者BがYに使用収益させているような場合には、現実にはYが使用収益しているから信頼関係の破壊があるといえるからです。
譲渡担保権者が建物の引渡しを受けて使用収益しているときは、例外的に、建物の敷地について賃借権の譲渡がされたものであると考えるべきだという価値判断を示していると考えます。
そして、他に賃貸人に対する信頼関係を破壊すると認めるに足りる特段の事情がない限り、賃貸人は解除できます。
なぜならば、民法612条の趣旨から、賃借人が賃借物を無断で第三者に使用または収益させることが、契約当事者関係の信頼関係を破壊することになるからです。
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賃貸借契約における当事者間の信頼関係を重視して、賃借人が第三者に賃借物の使用または収益をさせるためには、賃貸人の承諾を要するものとしているというのが民法612条の趣旨です。
このような趣旨を踏まえると、譲渡担保権者が建物の使用収益をする場合には、敷地の使用主体が替わることによって、その使用方法、占有状態に変更を来して、当事者間の信頼関係が破壊されるものと評価できます。
以上のような理由から、賃借権の目的物である土地上の建物に譲渡担保権が設定された場合には、原則として賃借権の無断譲渡には当たらないが、譲渡担保権者が建物の引渡しを受けて使用収益しているときには、例外的に、賃借権の無断譲渡に当たるとしています。
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