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今回は、意思能力がない場合の法律関係についてご紹介させていただきます。
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意思表示とは、一定の法律効果の発生を欲する意思を外部に対して表示する行為のことを意味しています。例えば、契約は、申込みの意思表示と承諾の意思表示が合致することによって成立します。
民法の原則として、表示行為があれば、意思表示は有効であり、それに伴って法律関係にも変動が生じることになります。例えば、売買契約を締結する意思表示の合致があると、売買契約が成立して、それに伴って原則として契約締結時点に所有権移転の効果が生じることになります。
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しかし、例外的に、表示行為がある場合でも意思表示が無効になる場合があります。そのことについて定めているのが、民法3条の2です。同条によると、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったとき」に、当該法律行為は無効になると規定されています。
そうすると、意思表示をする際に、意思表示を行った者が意思能力を有しないときには、その者がした意思表示が無効になります。例えば、売買契約を締結する際に、売主が意思無能力であった場合には、その者がした意思表示は無効であることから、売買契約は無効となり、所有権移転の効果も発生しないことになります。
意思表示に対応する意思がない場合のことを「意思の不存在」といいます。このような場合には、意思表示は原則として無効になります。
意思能力がない状態の者は、自分の行為がどのような法律効果をもたらすかということを理解できない状態にあります。そうすると、意思表示に対応する意思を有していたとはいえません。したがって、その意思表示は効力発生の基礎に欠ける状態にあるといえるから、権利義務の発生する原因にはなりません。
それに加えて、意思無能力の状態にある弱者を保護すべきだという政策的判断もあります。
以上のような理由から、改正民法においては、意思能力を有しない者の意思表示を無効とする明文の規定が設けられました。
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法律行為を行う当事者が意思表示の時点に意思能力を有していない場合には、その意思表示が無効になります。
したがって、意思無能力であることを主張する者は、そのような事実を主張立証する必要があります。
意思能力とは、自分の行為によりどのような利益や害を得るか、失うかを判断することができる知的能力を意味しています。
意思能力は、一般人であれば、おおよそ7から10歳で認められるとされていますが、個別の事案によって判断を行う必要があります。
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重要な法律行為であればあるほど、慎重に判断する能力が求められます。
また、複雑な法律行為であればあるほど、それにより生じる法律行為の結果について判断をすることが難しくなります。
そこで、意思能力があると判断されるために要求される自己の行為の利害得失を判断する知的能力の有無は、法律行為の性質や重要性、それにより求められる判断等を総合的に考慮して、個別具体的に判断する必要があります。
しかし、過去のある時点における当事者の判断能力を主張立証することが難しいことが多いです。例えば、ある時点で認知症の状態にあったということが客観的に証明することができれば、判断能力がなかったという方向につながるといえるでしょう。
無効とは、(法律)行為の効力が初めから認められないことを意味しています。そうすると、法律行為が無効だと、その法律行為によって権利変動が起こらなかったことになります。
意思無能力について主張することができる者は解釈上限定されています。
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存在しないものを存在しないと主張することは誰にでも許されるべきです。そこで、無効のときには、原則として、誰でも無効を主張することができると考えられます。このような考え方を絶対的無効と言います。
しかし、意思表示時点で意思能力がないときに、当該意思表示が無効になる趣旨を踏まえると、法律行為の効果を引き受けるか否かを意思無能力者に選ばせることが適当です。したがって、同条に基づく無効は、意思無能力者側からしか主張できないと考えられます。このような考え方を相対的無効といいます。
以上のように、意思無能力であるか否かは、自分の行為によりどのようなことが起こるかを判断する能力があるかをさまざまな事情をもとに判断します。
このように、事案によっては、意思無能力の主張をすべき場面やそうではない場面が分かれることから、具体的な事案についてお困りの方は弁護士までお問い合わせください。