保証人への請求と抵当権の実行はどちらが先?弁済による代位まで弁護士がわかりやすく解説 | 弁護士法人リコネス法律事務所

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保証人への請求と抵当権の実行はどちらが先?弁済による代位まで弁護士がわかりやすく解説

保証人に請求するべきか、先に抵当権を実行するべきか── 債権回収の優先順位と、「弁済による代位」「物上保証人の求償権」の仕組みを、事例を用いて解説します。

1 保証人請求と抵当権実行の優先順位とは?問題の全体像

 今回は、人的担保と物的担保をとっている場合に、そのどちらから先に回収する必要があるのかという問題について紹介していきます。平たい言葉を用いて説明するならば、抵当権の実行と保証人に対して支払いを求めるという2つの方法があるときに、どちらから行えばよいのかという問題について説明をしていきます。

 ※保証人との契約の基本について知りたい方は、関連記事「保証契約について」もあわせてご覧ください。

 また、この問題に対する回答を導くために必要となる「弁済による代位」という制度についても併せて紹介していきます。

 今回は、以上の問題について答えていくために、以下のような事例を用いて説明させていただきます。

 [事例]

 債権者Aが、債務者Bに対して、2000万円を融資して、その債務をBから委託を受けたCが保証することとした。さらに、Dが有している2000万円の価値を有する甲土地に対して抵当権を設定した。

2 抵当権の実行と保証人への請求はどちらが先でもよい?民法上のルール

 抵当権の実行と保証人に対する請求のいずれを先に行うべきかという問いに先に答えます。その回答は、どちらから先に行っても民法上は差し支えないということになります。

 ※訴訟でどのように主張立証していくかについては、「民事訴訟の場面において証拠となる文書はどのように提出しますか」も参考になります。

 民法には、抵当権の実行と保証人に対する請求のどちらか一つを先に行わなければならないとする規定は用意されていません。

3 弁済による代位とは?保証人・物上保証人の求償関係を整理

 このように民法は、保証人に対する履行請求と抵当権の実行のどちらか先に行わなければならないと定めていないです。それでは、その後の法律関係はどうなるのでしょうか。この点について解説をするために、弁済による代位の制度について紹介させていただきます。

3−1 保証人の求償権と抵当権の引継ぎ(民法499条・501条)

 例えば、[事例]において、Aから先に履行請求を受けたCがそれに応じて2000万円は返済した場合、どのような法律関係になるのでしょうか。

 AがCから2000万円の返済を受けたことで満足を得ています。したがって、この法律関係からは退場していきます。そして、AがBに対して有していた2000万円の貸金返還請求権は消滅するはずです。抵当権の付従性の考え方に従うと、本来であれば、貸金返還請求権が消滅することで甲土地の抵当権も消滅するはずです。

 一方で、保証人Cは、債務者Bに対して、求償権を有しています(委託を受けた場合には民法459条)。この求償権を行使するための担保を確保するための規定が弁済による代位です。

 債務者のために弁済をした保証人は、債権者に代位します(民法499条、500条)。債権者との間で消滅したはずの債権を求償権者と債務者との関係では消滅しなかったものと擬制することになります。

 そして、これにより、保証人Cは、貸金返還請求権に付着していた担保権、今回の事例でいえば、甲土地の抵当権を行使することができます(民法501条)。

 甲土地の抵当権を実行することで、保証人Cは債務者Bに対して有する求償権の満足を受けることができることになります。

 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位します(民法501条3項)。そうすると、保証人Cが確保できる金額は、決まっています。2000万円の求償権を確保するために、弁済による代位で権利行使をできる額は、1000万円になるはずです。

3−2 物上保証人の求償権と保証人との按分(民法372条・351条・501条)

 Dのように、他人の債務を担保するために物を提供した人のことを物上保証人と呼びます。民法上、物上保証人も債務者に対して求償権を有しています(抵当権の場合は、民法372条の準用する351条)。

 したがって、甲土地の抵当権が実行されて換価を受けると、DはBに対して2000万円の求償権を取得することになります。そして、弁済による代位が起きて、Cに対する保証債務履行請求権を行使することができます。

 Cは、Bに対する求償権を行使する場合にも、弁済による代位によってできる権利行使は制限されています。

 同じく、保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位します(民法501条3項)。そうすると、物上保証人Dが確保できる金額は、決まっています。2000万円の求償権を確保するために、弁済による代位で権利行使をできる額は、1000万円になるはずです。

 以上の2つの結果を踏まえるとわかるように、弁済による代位の恩恵にあずかって、保証人が物上保証人に対して権利行使をした場合でも、物上保証人が保証人に対して権利行使をした場合でも、2000万円の求償権のうち1000万円しか行使できないことになります。

 このように、保証人に対する請求と抵当権の実行の選択という債権者が偶然の事情で決定をしたことによって、誰かが不当に責任を負うという事態を防ぐ用意が民法の弁済による代位の制度でなされていることになります。

4 まとめ:保証人請求と抵当権実行は弁済による代位でバランスが取られる

 以上でみてきたように、債権者は、抵当権の実行と保証人に対する履行請求のいずれを選択することもできます。そして、抵当権の実行が先になされたとしても、保証人に対する履行請求が先になされたとしても、弁済による代位の制度があることによって、物上保証人と保証人のいずれも按分して債務を負担することになります。

 ※訴訟以外の話し合いによる解決を検討している方は、「和解とはどのような契約ですか」および「和解にはどんな事項が書かれているか」もご覧ください。

 ※回収や訴訟に伴う費用負担については、「相手方に弁護士費用を請求できるか」も参考になります。

 具体的な事案において、どのような手段をとるべきかは、弁護士までお問い合わせください。

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