リコネスコラム

冒頭手続きとは何か

1 はじめに

 被告人が起訴されてから、判決が出るまでの流れを公判手続といいます。今回は、この公判手続のうち、冒頭手続についてご紹介させていただきます。

 冒頭手続とは、証拠調べ手続をはじめとする公判手続の最初に行われる手続のことです。

 ここでは、冒頭手続について解説する前提として、公判手続の大まかな流れについて紹介させていただきます。

・公判手続のおおまかな流れ

 公判手続は、大まかに言えば、5つの段階があります。その5つは、①冒頭手続、②証拠調べ手続、③論告・弁論・最終陳述、④評議、⑤判決になります。

①冒頭手続
 ↓
②証拠調べ手続
 ↓
③論告・弁論・最終陳述
 ↓
④評議
 ↓
⑤判決

2 冒頭手続の具体的な流れ

 冒頭手続では、はじめに、裁判所に出頭している者が起訴された被告人であることを確認が行われます。

 次に、検察官及び被告人・弁護人の想定している事案がどのようなものであるか、当該事件における争点はどこか、その争点についての各当事者の主張はどのようなものかが裁判所に示されることになります。

 具体的には、以下のような流れで行われます。

⑴人定質問(刑事訴訟規則196条)
 ↓
⑵起訴状の朗読(刑事訴訟法291条1項)
 ↓
⑶黙秘権及び訴訟法上の権利の告知(刑事訴訟法291条4項、刑事訴訟規則197条)
 ↓
⑷被告人及び弁護人の被告事件に対する陳述(刑事訴訟法291条4項)

 以下では、それぞれの手続について紹介させていただきます。

3 人定質問(刑事訴訟規則196条)

 検察官が起訴状を朗読するのに先立って、裁判長は、被告人が人違いでないことを確かめるに足りる事項を質問します。この手続のことを人定質問と呼びます。

 人定質問の方法を定めた規定はありません。実際の裁判では、被告人の氏名、年齢、職業、住居、本籍または国籍を質問しています。

4 起訴状の朗読(刑事訴訟法291条1項)

 人定質問が終了すると、次に、検察官による起訴状の朗読があります。

 起訴状の朗読は、これから裁判所が審理をする対象になる事件を明らかにするために行われます。そこで、刑事訴訟法は検察官による起訴状の読み上げを義務づけています。

 起訴状に記載された事項のうち、被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項(刑事訴訟法256条2項1号)は、人定質問で聞かれる事項です。そこで、実際の裁判では、起訴状に記載された事実のうち、公訴事実(同項2号)、罪名及び罰条(同項3号、同条4項)だけが朗読されます。

 なお、この場面で、起訴状の記載でわからない点がある場合には、裁判長、陪席裁判官は検察官に対して釈明を求めることができます(刑事訴訟規則208条1項、同条2項)。このことを「求釈明」といいます。

 また、被告人・弁護人は、裁判長に対して、釈明のための発問を求めることができます(同条3項)。このことを、裁判長に対して「求釈明を求める」と表現します。

5 黙秘権・訴訟法上の権利の告知

 起訴状の朗読が終わると、裁判長は、被告人に対して、黙秘権・訴訟法上の権利を告げます(刑事訴訟法291条5項)。

 具体的には、①終始沈黙し又個々の質問に対し陳述を拒むことができること、②陳述をすることもできること、③被告人が、質問に答えて任意に陳述をすれば、その供述は有利・不利を問わずに証拠になる旨を伝えることができます(刑事訴訟規則197条1項)。

 また、裁判長は、必要があると認めるときは、被告人に対して、①から③について告げるだけでなく、被告人が充分に理解していないと思われる被告人保護のための権利を説明しなければならないとされています。

6 被告人及び弁護人の被告事件に対する陳述

 黙秘権・訴訟法上の権利の告知が終わると、被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会が与えられます。この機会は、被告人の立場からみると、はじめて裁判所に対して、起訴された事件に対して口頭で意見を述べる場になります。この意見の陳述のことを罪状認否と呼ぶこともあります。

 裁判所は、原則として、この陳述を受けてはじめて当該事件についての被告人側の主張の内容を知ることができます。そして、ここで知った主張をもとにして事件の争点を把握して、訴訟をどのように進めていくかの指針を決めることになります。

 この場面では、起訴された事実についての認否や、正当防衛など違法性を阻却する事実についての主張などが行われます。

 なお、ここで、被告人が発言した場合、その発言も公判廷における供述であることから、証拠になります。

7 冒頭手続が終わることの意味

 第1回公判期日とは、冒頭手続きが終了するまでの手続のことを意味しています。そうすると、冒頭手続が終了しているか否か、言い換えると、⑴~⑷の手続が行われたかどうかが、第1回公判期日が終了したか否かを判断する基準になります。

 刑事訴訟法上、第1回公判期日の前後により扱いが異なっている手続としては、例えば、勾留に関する処分などがあげられます(刑事訴訟法280条)。

8 まとめ

 以上でみてきたとおり、冒頭手続は、⑴人定質問→⑵起訴状の朗読→⑶黙秘権及び訴訟法上の権利の告知→⑷被告人及び弁護人の被告事件に対する陳述(刑事訴訟法291条4項)という順番で行われます。

 この手続が終わると、証拠調べ手続、そして判決へと手続が進んでいくことになります。

 ご自身、ご家族が逮捕された、起訴された場合には、まずは、弁護士までお問い合わせください。

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