
よい ゴール0120-410-506
今回は、情報の取得を不正にした場合にどのような刑事上の罪に問われるかについて解説をしていきます。
まず、情報の不正な取得に対して、窃盗罪が成立するかを検討していきます。
窃盗罪は、刑法235条に定められています。
同条は、「他人の財物を窃取した者」を窃盗罪として処罰すると定めています。
窃盗罪は、他人の占有している財物をその者の意思に反して自己または第三者に占有を移すことによって成立します。
窃盗罪における保護法益についての議論についてはこちらをご覧ください。
この条文から、窃盗罪の客観的な構成要件要素は、以下のとおりであると考えられています。
①他人の財物であること
②その者に財物の占有が認められること
③窃取行為があること
また、窃盗罪の主観的な構成要件要素として、以下の2つが要求されています。
④故意
⑤不法領得の意思
窃盗罪が成立するためには、その被害客体が「財物」である必要があります。
それでは、財物に当たるかどうかはどのように判断すればよいのでしょうか。
この点について、学説では2つの説が対立しています。
有体物説の立場は、財物は「物」と名前についている以上は、有体物であると考える立場のことをいいます。この考え方は、民法85条が物を有体物と定めていることと調和します。また、財物の範囲が明確に決定できるという点もメリットであるとされています。
これに対して、管理可能性説という立場も主張されています。この立場は、財物を人が管理できる対象であると考えています。例えば、明治時代の判例には、電気が財物に当たるとしたものがあります(大判明治36年5月21日刑録9輯874頁)。この判例では、他人の電気を盗んだ者が窃盗罪として処罰されています。
ただし、現在は、刑法245条に、電気を財物であるとみなすという規定が設けられています。学説上は、この規定が設けられた以上は、管理可能な他のエネルギーを肯定することは、刑法上禁止されている類推適用に当たることから許されないのではないかという批判が加えられています。
以上のような学説の考え方を踏まえると、財物とは有形物であると捉えるべきです。そして、無形の存在である情報については、財物には当たらないことになります。
それでは、情報の不正取得は窃盗罪で処罰の対象にならないのかというとそうではありません。
例えば、情報が載せられているUSBメモリなどを勝手に持ち出した場合には、窃盗罪に問われる可能性があります。USBメモリという有体物を窃取した場合には、当然窃盗罪の構成要件に該当するからです。
情報の不正取得について窃盗罪で処罰をした裁判例として、東京地判昭和59年6月28日刑月5=6号476頁があげられます。
この事案は、上司の戸棚からファイルを持ち出して、共犯者に渡してコピーをさせたうえで元の場所に戻しておいたという事案です。
この事案において、裁判所は、ファイルが財物に当たるという判断をしました。そして、ファイルを複写したことによって、ファイルを所有している権利者の独占的・排他的な利用が阻害されて、財物としての価値が大きく減耗することから、ファイルの窃取行為は窃盗罪の構成要件に該当するという判断をしました。
また、以上の裁判例は、持ち出したファイルをコピーしたという事案でしたが、ファイルを持ち出さなかった場合にも窃盗罪の成立を肯定した事案がありました。
その事案においては、コピーをして情報がのった状態の用紙を被害客体とする窃盗罪の成立を認めました(東京地判昭和40年6月26日判時419号14頁)。
以上のように、情報が掲載された有体物を無断で持ち出した場合には、そのような行為が窃盗罪に問われる可能性があります。
以上で述べてきた窃盗罪の成立以外に、情報の不正な取得そのものを処罰する規定があることから、最後にご紹介させていただきます。
そのような処罰規定は、刑法ではなく、不正競争防止法に定められています。
不正競争防止法21条には、営業秘密不正取得行為が処罰の対象になる旨が定められています。
例えば、同条1項1号は、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為又は財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為その他の営業秘密保有者の管理を害する行為により、営業秘密を取得した者は、十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めています。
以上のように、情報の不正取得には、刑法上の窃盗罪だけでなく、不正競争防止法上の営業秘密侵害罪に問われる可能性もあります。
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