クレジットカードの不正使用で詐欺罪になる?他人名義・自己名義ごとに成立要件をわかりやすく解説 | 弁護士法人リコネス法律事務所

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クレジットカードの不正使用で詐欺罪になる?他人名義・自己名義ごとに成立要件をわかりやすく解説

落とし物のクレジットカードを使ったり、支払う意思や能力がないのに自分名義のカードを使ったりすると、どこまで「詐欺罪」にあたるのか――他人名義・自己名義のケースごとに、判例や学説を踏まえて整理します。

1 クレジットカード不正使用と詐欺罪の関係とは

 今回は、クレジットカードの不正使用に詐欺罪が成立するかについて、場合分けをして紹介させていただきます。

 具体的には、他人名義のクレジットカードを不正使用した場合と、自己名義のクレジットカードを不正使用した場合の2類型に分けてご紹介させていただきます。

2 クレジットカード不正使用に関係する詐欺罪の4類型と成立要件

 クレジットカードを不正使用した場合には、詐欺罪が成立することが考えられます。ただし、詐欺罪にも4つの類型があり、それぞれ、成立要件が異なります。そこで、まず、詐欺罪の類型とその成立要件について概観していきます。

 なお、詐欺罪の成立要件に関する詳細な解説については、こちらをご覧ください。 

 ※保護法益の考え方について詳しく知りたい方は、関連記事「窃盗罪の保護法益について」も参考になります。

⑴ 詐欺罪の類型

 刑法上の詐欺罪は、以下の4つの類型にわけられます。

 ① 1項詐欺罪(刑法246条1項)

 ② 2項詐欺罪(刑法246条2項)

 ③ 準詐欺罪(刑法248条)

 ④ 電気計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)

⑵ 詐欺罪の成立要件についての概観

 詐欺罪のうち1項詐欺罪は、人を欺いて財物を交付させたときに成立します。

 1項詐欺罪の客観的構成要件は、①被告人による欺罔行為、②被害者の錯誤、③被害者による財物の交付行為、④財物の占有移転があります。また、主観的構成要件として、⑤故意と⑥不法領得の意思が要求されています。 

 ※「不法領得の意思」がどのような意味を持つかについて詳しく知りたい方は、「窃盗罪における不法領得の意思とはどのようなものですか」も参考になります。

 2項詐欺罪は、人を欺いて財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させたときに成立します。

3 他人名義クレジットカードの不正使用は原則1項詐欺罪が成立する

 それでは、本題であるクレジットカードを不正使用した場合の解説をしていきたいと思います。まずは、他人名義のクレジットカードを不正使用した場合に詐欺罪が成立するかを検討していきます。

 クレジットカードは、本人だけが利用できるとする規約が設けられています。この規約によると、カードの名義人以外はカードの使用が禁止されています。したがって、落とし物である他人のクレジットカードを拾ったあとに勝手に使用した場合だけでなく、他人から許可をもらって他人名義のクレジットカードを使用したような場合にも詐欺罪が成立する可能性があります。

 今回は、後者の場合、すなわち、他人からクレジットカードの使用許可をもらった場合を例にして、解説をしていきます。 

 ※クレジットカード以外で、情報を不正に取得した場合にどのような犯罪が問題となるかについては、「情報の取得を不正にした場合は窃盗罪に問われますか」もご覧ください。

・判例の立場

 このように、他人からクレジットカードの使用許可をもらった場合について、判例は、名義人の承諾の有無にかかわらず詐欺罪が成立するという判断を示しています(最決平成16年2月9日刑集58巻2号89頁)。

 判例がどのような考え方であるかを確認していきましょう。

 まず、欺罔行為の内容は、クレジットカードを呈示している者がクレジットカードの名義人であること、すなわち、正当な利用権限を有するものであると誤信させるような態度による欺罔行為だと考えられます。

 会員規約上、クレジットカードの利用者は通常本人であることから、嘘を何も述べていないとしても、態度による欺罔行為の成立が認められるでしょう。

 そして、クレジットカードの利用者が本人でない場合には、加盟店は信販会社から立替払いをしてもらえない可能性があることから、加盟店にとって、クレジットカードを呈示した者が名義人であるか否かは財物交付の判断の基礎になる重要な事項であるといえます。

 たとえ名義人の承諾があったとしても、加盟店は信販会社から立替払いを受けられないおそれがあります。したがって、詐欺罪の成否に名義人の承諾の有無は関係ないことになります。

 そして、同判例の事案においては、加盟店であるガソリンスタンドの従業員を誤信させてガソリンという財物を交付させています。

 以上から、他人名義のクレジットカードを使用した場合には、仮に名義人の承諾があったとしても、加盟店を被害者とする1項詐欺罪が成立することになります。

4 自己名義クレジットカードの不正使用で詐欺罪が問題となるケース

 それでは、次に、自己名義のクレジットカードの不正使用の場合に詐欺罪が成立するかを確認していきましょう。

 この自己名義のクレジットカードの不正使用とは、例えば、信販会社に対して代金相当額を支払う意思や支払い能力がないにもかかわらず、加盟店に対して、それがあるかのように装った場合を意味しています。

 この点について判断を示した最高裁の判例はありません。ただし、詐欺罪が成立するとした下級審裁判例があります(福岡高判昭和56年9月21日刑月13巻8=9号527頁、東京高判昭和59年11月19日判タ544号251頁)。

 これらの裁判例は、欺罔行為により加盟店に支払能力があるものと誤信させて商品を交付させたものとして、被害者を加盟店、被害客体を商品とする1項詐欺罪が成立するとしています。

 一方で、学説からは、支払能力に関心をもたなくてよいというクレジットカードの制度に反することから、むしろ、欺かれた者を加盟店、信販会社を被害者とする三角詐欺が成立し、2項詐欺罪で処罰するべきだという立場が主張されています。

5 クレジットカード不正使用と詐欺罪成立のポイントまとめ

 以上のように、他人名義のクレジットカードの不正使用をした場合も自己名義のクレジットカードの不正使用をした場合も、1項詐欺罪が成立する可能性があります。ただし、具体的な事案によっては、詐欺罪の成立が否定される場合もあります。 

 ※捜査がどこまで許されるのかといった刑事手続の流れについて知りたい方は、「強制捜査と任意捜査の区別について」も参考になります。 

 ※逮捕・勾留された場合にどのような対応が考えられるかについては、「勾留に対する法的な対応について」もあわせてご覧ください。

 具体的な事件についてお困りの方は弁護士までお問い合わせください。

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