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在庫商品を担保にする場合に必要な「種類・場所・量的範囲」の特定について、最高裁判例をもとに弁護士が解説します。
今回は、集合動産譲渡担保契約の有効要件の考え方について紹介します。
例えば、倉庫にある在庫商品をまとめて担保に提供してお金を借りることができるととても便利です。そこで、判例法理上、動産をまとめて担保に提供するということが認められてきました。このような考え方を集合動産譲渡担保といいます。
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集合動産譲渡担保の設定契約においては、譲渡担保権の効力が及ぶ目的物の範囲を特定することが要求されています。
目的物の範囲を特定することを要求される理由は2つあると考えられます。
まず、譲渡担保権の効力が及ぶ範囲を特定できる基準が必要になるからです。特に譲渡担保権を実行する際には、引渡しを求める物の範囲が明確になっている必要があるといえよます。
次に、本件のように譲渡担保権の対象動産について第三者との競合が生じた場合に、譲渡担保権者が優先権を主張するために、目的物の範囲が明確になっている必要があります。
この特定性の要件について、はじめて判断をしたのが、最判昭和54年2月15日民集33巻1号51頁(以下、昭和54年判例と呼びます。)です。
昭和54年判例は、「構成部分の変動する集合動産についても、その種類、所在場所及び量的範囲を指定するなどなんらかの方法で目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうるものと解するのが相当である」としました。
そして、昭和54年判例では、「乾燥ネギフレーク44トンのうち28トン」という量的範囲の指定では足りないと判断しました。
譲渡担保権の効力が及ぶ「28トンの部分」を、その効力が及ばないそれ以外の部分と識別することが困難であるから、特定として不十分であると判断したものだと考えられます。
また、昭和54年判例に次いで出された、最判昭和57年10月14日判時1060号78頁は、譲渡担保設定者の居宅及び店舗兼住宅の各建物内に納置する商品(酒類・食料品等)、運搬具、什器、備品、家財一切を目的とする譲渡担保権設定契約について、「家財一切」という文言では種類の特定が不十分であるから無効であると判断しました。
「家財一切」という文言では、何が「家財」に当たるのか不明確です。そして、仮に「家財」の意味が「営業用の物件を除き家庭内で家族全体の共同生活に供用されるある程度の恒常性と経済的価値を有する物件」を指していると解釈できたとしても、家族の共同生活に使用される物件にはさまざまな種類があるから、個々の物件が具体的に譲渡担保権の効力が及ぶ物であるかどうかを識別することが困難な場合が当然予想されます。
以上のような理由を踏まえると、家財一切という文言では、種類の特定が不十分であるといえます。
以上のように、集合動産譲渡担保設定契約において、譲渡担保権の効力が及ぶ目的物の①種類、②場所、③量的範囲の3つの要素を特定しなければならないという考え方を判例は採用しているものだと考えられます。
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最判昭和62年11月10日民集41巻8号1559頁は、最高裁がはじめて集合動産譲渡担保設定契約が有効であると述べた判例です。そこで、この判例がどのような種類・場所・量的範囲の指定があれば、特定していると認められると述べているのかを分析します。
まず、場所の特定から検討する。本件根譲渡担保権設定契約における場所の摘示は、Yの第一ないし第四倉庫内及び同敷地・ヤード内となっていました。
このように、本件根譲渡担保権設定契約において場所は明確に特定されていたといえます。
そして、場所の特定が明確であると、種類・量的範囲についての特定の不十分さを補うことができます。
次に、量的範囲の特定を検討します。
「一切の在庫商品」という文言であれば、「44トンのうち28トン」という文言と比較しても、譲渡担保権の実行の場面において、譲渡担保権の効力が及ぶ範囲を一義的に特定できます。
最後に種類の特定を検討します。
本件根譲渡担保権設定契約においては、「普通棒鋼、異形棒鋼等一切の在庫商品」が目的物の種類であるとされています。
種類の特定がなされているか否かに対しては、他の2つの要素が明確かつ一義的に譲渡担保権の効力が及ぶ範囲を特定していたことも判断に大きな影響を与えたと考えられます。
さらに、本件は家財ではなく在庫商品が対象であったことも特定に欠けるところはないという結論に至る重要な要素だったと考えられます。
建物の場所が明確に特定されていたにもかかわらず種類の特定性に欠けると判断した昭和57判決における「家財一切」という文言と比較してみても、「一切の在庫商品」という文言だけでは目的物の種類の特定性に欠けるように思われます。
しかし、家財と比較して、ある会社の在庫商品であるかないかの判断は容易であるといえます。さまざまな家族形態が考えられるから、家財に当たるか否かの判断は難しいです。
一方で、ある会社の在庫商品は、その会社の事業の内容を確認すれば絞り込むことができます。特に、本件においては、普通棒鋼や異形棒鋼という例示があったことから、会社の在庫商品に含まれるか否かの判断は容易であったといえるでしょう。
以上のような2つの事情を踏まえると、「一切の在庫商品」という抽象的な文言であったとしても、昭和57年判決とは異なり、特定性の要件を充たしていると判断したといえます。
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以上を踏まえると、ある会社の「在庫商品」を対象とする集合動産譲渡担保設定契約を考える者は、「44トン中28トン」のように数量を明示するのではなく、保管場所を明確に示したうえで、その保管場所にある「一切の在庫商品」を担保の目的にするという約定をすべきだと考えられます。
具体的な事案において、いかなる集合動産譲渡担保契約を締結すべきかは弁護士までお問い合わせください。
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