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今回は、債務者が破産したという事態に直面したときに、抵当権をはじめとする担保物権を有している債権者は、どのように権利行使をすることができるかについて紹介させていただきます。
この理解をするために、今回は、以下のような事例を用いて紹介していきます。
B社は、食器の製作を行っている会社である。B社は、食器を作るための新しい機械を導入する費用が必要となった。そこで、B社は、好意にしているA銀行に融資を申し込んだ。
A銀行は、B社が所有している評価額2000万円の本社ビルに抵当権を設定することを条件として提示してきたことから、B社はこれを承諾した。そして、A銀行は、同社に対して、2000万円を1年後に返済する約束で融資した。そして、この抵当権設定契約に基づいて、B社の所有している本社ビルについて抵当権設定の登記がなされた。
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しかし、1年後、B社の経営状態が急激に悪化して支払不能状態に陥ったことから、B社は破産手続開始の申立てをして、その後破産手続開始決定を受けた。

それでは、以上の[事例]において、債権2000万円の全額を回収したいA銀行はどのような手段を採るべきでしょうか。この点について解説していきます。
1で紹介した[事例]において、A銀行が、B社に対して、2000万円を返済してもらうにはどうすればよいでしょうか。
仮に抵当権の設定を受けていなかった場合に、A銀行がとることができる手段から紹介していきます。
このような前提をもとにすると、A銀行のとることができる手段は、破産債権者として債権を有していると届出をして、破産管財人から配当してもらうという方法です。
しかし、このような方法で返済を受けたとしても、2000万円ちょうど返してもらうことができる保障はありません。むしろ、債権全額の満足を得ることができる事態の方が異例です。
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今回の[事例]において抵当権の設定を受けているA銀行は、全額を回収する方法があります。それは、抵当権の実行をすることです。それでは、破産の場面において、抵当権の実行をすることができるのでしょうか。
先に答えから申し上げると、抵当権を行使することはできます。その理由は、別除権という制度があるからです。
それでは、別除権とはどのような考え方でしょうか。この節では、その考え方について紹介していきます。
債務者が破産をしてしまったときは、債務者に対して通常の債権を有している人は破産手続以外の方法で弁済を受けることが禁止されています(破産法100条)。
また、破産者、すなわち破産をした債務者が破産時点で有していた破産財団を構成する全ての財産の管理処分権は、破産管財人が取得します(破産法34条1項、同法78条)。そして、破産管財人がそれらの財産を管理して、最終的には売却することによって弁済の原資を手に入れます。この弁済の原資から、破産債権者に対して配当が行われることになります。
しかし、これらの破産の制度は、抵当権などといった物的担保をとっていた債権者にとっては困った事態です。破産手続開始の時点で担保にとっていた物が売却されて弁済の原資にされてしまうと、自分が先に設定していた優先弁済を受ける権利の行使をすることは全くできないことになってしまうからです。
抵当権などの担保をもっている債権者は、債務者の財産状態が悪化する以前から、債務を弁済してくれないという事態に備えていた用心深い人です。そのような人が、債務者の財産状態が悪化した究極の状態ともいえる破産の場面で権利を一切行使できないという結果は不当だということは明らかでしょう。
そこで、破産法では、債務者の財産状態の悪化に備えていた債権者を尊重する必要があると考えられることから、抵当権や質権、特別の先取特権といった一定の担保物権については、破産法上、破産手続外で行使することを認めています。
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以上でみてきたように、抵当権を設定して備えていた債権者を優遇するために別除権という制度が設けられています。

別除権の行使は、破産手続外で行うことができます(破産法65条)。
したがって、A銀行は破産手続の制約を受けることなく抵当権の実行をすればよいです。
今回の[事例]では、別除権の行使として抵当権の実行を受ければ、A銀行は、B社に対して融資していた2000万円全額を回収することができることから、回収できなかった部分はありません。
しかし、抵当権の実行で回収できない部分があるときには、その部分について破産債権者として配当を受けることもできます(破産法108条1項)。なお、この場合は、最後配当の除斥期間満了までに担保権の行使により弁済を受けられなかった債権の額を証明する手続等が要求されます(破産法198条3項)。
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以上でみてきたように、破産法上でも抵当権の実行をすることはできます。そして、この方法によることで、配当を受けた時よりも格段に多くの債権を回収することができます。
具体的な事案において、別除権の行使が認められるか等については、弁護士までお問い合わせください。
