刑法上の詐欺罪とは?――刑法246条の意味・4つの類型と成立要件をわかりやすく解説 | 弁護士法人リコネス法律事務所

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刑法上の詐欺罪とは?――刑法246条の意味・4つの類型と成立要件をわかりやすく解説

1 はじめに:刑法上の「詐欺罪」とはどのような犯罪か

 今回は、刑法上の詐欺罪がどのような犯罪であるかについて紹介させていただきます。

 ※同じ財産犯である窃盗罪との比較については、関連記事「窃盗罪の保護法益について」も参照してください。

2 刑法上の詐欺罪の4つの類型(1項詐欺・2項詐欺・電子計算機使用詐欺・準詐欺)

 詐欺罪には、3つの類型があります。

(1)財物をだまし取る「1項詐欺罪」(刑法246条1項)とは

 1つ目は、財物を交付させるという「1項詐欺罪」と呼ばれる類型の詐欺罪です(刑法246条1項)。お金や土地を騙し取ったなどという場合がこの類型に当たります。

(2)財産上不法の利益を得る「2項詐欺罪」(刑法246条2項)とは

 2つ目は、財産上不法の利益を得るという「2項詐欺罪」と呼ばれる類型の詐欺罪です(同条2項)。財産上不法の利益を得ることの具体例としては、債権や担保を取得することや、債務の免除や弁済の猶予を得ることなどがあげられます。

 また、お金を支払う意思がないのにタクシーの運転手に目的地まで連れて行ってもらうというような役務・サービスの提供についても財産上不法の利益を得た場合に当たると考えるのが通説的な見解です。

 ※窃盗罪の主観面との比較については、「窃盗罪における不法領得の意思とはどのようなものですか」もあわせてご覧ください。

(3)電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)とはどのような犯罪か

 3つ目は、電子計算機使用詐欺罪です(刑法246条の2)。この電子計算機使用詐欺罪は、財産上不法の利益を得た場合にのみ処罰されています。この規定は、ATMから現金を引き出したときには窃盗罪が成立するものの、ATMから自己の口座や第三者の口座に振り込みをした場合には処罰ができないという事態に対処するために設けられた規定です。

(4)未成年者らを守る「準詐欺罪」(刑法248条)の特徴

 4つ目は、準詐欺罪です。この準詐欺罪は、未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者を処罰しています(刑法248条)。

3 詐欺罪(刑法246条1項)の成立要件|欺罔行為・錯誤・交付行為など

 ここでは、4つの類型の詐欺罪のうち、1項詐欺罪がどのような場合に成立するかを紹介していきます。

(1)詐欺罪の成立要件の全体像――6つの構成要件

 1項詐欺罪は、「人を欺いて財物を交付させた者」を処罰するとしています。この1項詐欺罪は、被告人による欺く行為(この欺く行為のことを、「欺罔行為」と呼びます。)があり、その結果、被害者に錯誤が生じ、その結果、被害者が財産を処分する行為を行い、その結果、被告人または第三者が財物の占有を取得したときに成立します。

 したがって、詐欺罪が成立するためには、客観的な構成要件要素として、①被告人の欺罔行為、②被害者の錯誤、③被害者の交付行為、④被告人または第三者への占有移転が認められる必要があります。また、主観的な構成要件要素として、⑤故意と⑥不法領得の意思も認められる必要があります。

(2)詐欺罪における「欺罔行為」とは何か

 近時の判例によると、欺罔行為とは、財物の交付の判断の基礎となる重要な事項に関する錯誤を生じさせるような行為を意味するものであると考えられています。

 平易な言葉で説明すると、ある財産を相手方にあげるか否かを判断する基礎になる重要な事項に勘違い、思い違いを生じさせるような場合に欺罔行為があると認められます。

 なお、機械は錯誤に陥らないから、欺罔の対象にはなりません。したがって、自動販売機に硬貨と似た形の物体を入れてお金を支払うことなく飲料を取得したというような事例においては、詐欺罪は成立せず、窃盗罪が成立することになります。

 ※自動販売機や電子データなど、情報の取得に関する犯罪との関係については、「情報の取得を不正にした場合は窃盗罪に問われますか」も参考になります。

 また、欺罔行為は、財物の交付に向けられたものである必要があります。したがって、例えば、「UFOが来た」と言って被害者の注意を逸らせて、その間にバッグを盗んだというような場合を例にとって考えてみましょう。

 このような事例においては、「UFOが来た」という発言は、被害者の注意を逸らせるものであったとしても、バッグの交付の判断の基礎となる重要な事実が偽られたと評価することはできません。したがって、欺罔行為はないことから、1項詐欺罪は成立しません。そして、被害者の意思に反する財物の占有移転があることから、窃盗罪が成立することになります。

 この欺罔行為は、財産の処分をする権限がある者に対して行う必要があります。したがって、財産の処分をする権限がない者に対して欺罔行為を行ったとしても、詐欺罪が成立することはありません。

(3)詐欺罪と窃盗罪を分ける「交付行為」とは

 詐欺罪は、占有者の意思にもとづく占有移転が行われている必要があります。この意思は、欺罔行為により生じた錯誤に基づいたものである必要があります。

 例えば、被告人が欺罔行為をしたが被害者がそれを見破ったものの不憫に思い1万円を交付したというような場合を考えてみましょう。

 このような事例においては、被告人が1万円を得たのは、欺罔行為が原因ではありません。したがって、1項詐欺罪が既遂になることはありません。しかし、欺罔行為という構成要件に該当する行為がなされている以上は、未遂犯が成立することになります。以上から、この事例では、1項詐欺未遂罪が成立するにとどまることになります。

 このような交付行為があるか否かにより、1項詐欺罪と窃盗罪の成否が区別されます。被害者の意思に基づく財物の交付がある場合には、1項詐欺罪が成立しますが、そのような意思に基づく財物の交付がない場合には、窃盗罪が成立することになります。

4 終わりに:詐欺罪でお困りの方は弁護士に相談を

 以上のように、詐欺罪にはさまざまな類型があり、また成立要件も難しい点が多いです。刑事事件でお困りの方は弁護士までご相談ください。

 ※名誉に対する刑事責任について知りたい方は、「名誉毀損罪はどのような場合に成立しますか」もあわせてご覧ください。

 ※逮捕・勾留後の身柄解放の制度については、「保釈について」も参照してください。

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